「今まで生きてきた中で一番幸せです」あのとき私はそう思った。
10年半前、高校3年の秋のことだった。
応援していたプロ野球チームが日本一になった。
ただ、それだけのことである。
だが、軽い冗談でも大げさな形容詞でもなく、心の底から本気でそう思っていた。
毎年、優勝チームのファンが「生きていてよかった」といったコメントをしているのをよく見かけるが、当時の私の気持ちと全く同じだ。
そのチームを「命」としているファンにとって、優勝は「人生の目的」とさえ思っているのだ。
しかし、そんな幸せは続かなかった。
ほとんどの選手がユニフォームを脱ぎ、スターは海を渡り、名監督はすでにこの世を去ってしまった。日本一のチームは、二度と甦ることはないのである。
あの日に帰りたいと思っても、もう戻れない。あの頃は楽しかったけど、今振り返ってみると、ささやかな甘い思い出のひとつに過ぎない。とても「人生の目的」とは言えないものである。
仕事帰りの街には、今日もビールを片手にナイター観戦の人たち。私も親鸞聖人の教え・阿弥陀仏の本願という真実を知らなければ、間違いなくそのような日々の繰り返しに、迷い込んでいただろう。
そう考えると浄土真宗親鸞会で仏法を聞かせていただいた喜びは、全く尽きることはない。