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グリーフ(死別の悲しみ)から立ち直った女性の体験「最愛の夫が交通事故で突然 逝った。それから4年……」

(1)グリーフって何?

この文章を読まれているあなたは、もしかすると、身近な人、大切な人を亡くされたばかりかもしれません。もしくは、だいぶ前に失ったのに、いまだに悲しみから立ち直れずにおられるのかもしれません。これは、そんなあなたへのメッセージです。

「グリーフ」は、ちょっと聞き慣れない言葉かもしれませんが、終末期医療や遺族ケアの専門家の間では、避けて通れない言葉だそうです。

「グリーフ」とは、

大切な人を亡くした悲しみのこと

で、直訳すれば「悲嘆」を表します。

「親が亡くなれば過去を失い、
配偶者が亡くなれば現在を失い、
子供が亡くなれば未来を失う」

と言われるほど、大事な誰かを失うのは、つらい体験です。

「つい先日、最愛の彼を亡くしました。 毎日心が引きちぎられるようで、闇の中にいるようです。 仕事にも手をつけられず、悲しみにずっと浸っています。
『ゆっくり心を休めてね』と声をかけてくれる人もいます。でも、生きているだけで苦しく、心を、どう休めればいいのでしょうか

「友人知人はしばらくは、気にかけてくれていたのですが、当然ですが、今はもうみな夫が亡くなったことなど忘れてしまっているようです。働く意欲がわいてきません。不安で、毎日消えてしまいたい気分になります

と言った声も聞きました。

カウンセラーで死生学者のウォース・キルクリースは、

伴侶やパートナーの死によって、この神秘的な『あなた、私、私達』は、突然『私』だけになってしまいます。私たちは同時に『あなた』と『私達』の2つを失うのです

とも、大切な人を失う悲しみの深さを表現しています。

(2)グリーフの3つの症状

グリーフには、大きく分けて3つの症状があります。

①精神面の変化

  • 故人を思い出して、涙が止まらなくなる。
  • 1日中、ぼんやりしている。
  • 物事に集中できない。
  • 突然、イライラする。
  • 何もする気にならない。
  • 人生がむなしく感じる。

など

②身体面の変化

  • 眠れない。
  • 食欲がない。
  • だるさがとれない。
  • めまいを感じる。
  • 頭痛や腹痛。
  • 動悸が激しくなる。

など

③社会面の変化

  • 強い孤独感に襲われる。
  • 友人と疎遠になる。
  • いろいろなものへの興味が薄れる。

など

多くの場合、これらは、大切な人を失った時の正常な反応です。ただし、あまりにも症状が著しい場合、特に②の身体的な変化の激しい場合には、専門の医療機関の受診をお勧めしたいと思います。

(3)グリーフケア 死別の悲しみの5つの乗り越え方

精神的にも、肉体的にも、社会的にも、大きな変化をもたらすグリーフ。この悲しみを、どう乗り越えたらよいのでしょうか。
心理カウンセラーや音楽療法士などの意見をまとめてみました。

①思う存分、悲しむ

悲しんでいいんです。泣いていいんです。大切な人を失って、悲しくないわけがないのですから。思う存分、悲しみましょう。

②悲しみはため込まない

一人で抱えこまずに、親身に聞いてくれる人に悲しみを話してみましょう。周囲に適当な話し相手がいない時には、日記やブログに書いて、その悲しみ、苦しみを表現すると、心が軽くなるものですよ。

③自分に優しく

通常は、「他人に優しく、自己に厳しく」するのがよいとされますが、大切な人を失った時は、自分に優しくしていいんです。ちょっと贅沢して、好きなものを食べたり、温泉に行ったりして、心と身体を休めましょう。

④近道はないと知る

大切な人を亡くした悲しみが、一朝一夕で癒えるはずがありません。瞬時に効果を発揮する特効薬はないと知りましょう。
しかし、同時に、いつまでも悲しみのどん底、ということもありません。朝の来ない夜もないし、春の来ない冬もありません。時間が悲しみを和らげてくれる日がきっと訪れます。

ここまでが、グリーフケアの専門家たちが、紹介している死別の悲しみの対処法です。でも、あなたは、「そんなことなら、すでにやっているよ。それでも、立ち直れないんだ」と言われるかもしれません。上の4つは、当面の対処法としては効果を発揮しても、究極的な救いにはならないからです。そこで、もう一つ、最も大事な対処法をご紹介したいと思います。

⑤グリーフを幸せへの大きなステップに

死別の悲しみを、本当の幸せへのステップにできたら、大切な人を亡くすという経験も生きてきます。グリーフを幸せへのステップにするとは、どんなことか。

実際に、夫と死に別れた悲しみを乗り越えた、兵庫県の尾崎君代さん(58)に語ってもらいました。

(4)グリーフから、私はこう立ち直った


  
夫を亡くしたのは、もう28年も前になります。
当時私は30歳。夫は34歳でした。悲しみを乗り越えるには、時間が必要でした。

深夜1時、布団に夫の姿がない

「道に倒れているのは、博志さんではないか」

11月半ばの午前1時半、夜のしじまを破って突然、電話が鳴り響きました。主人の行き付けの飲み屋の店長からです。驚いて夫の布団に目をやると、まだ帰っていません。体が震えました。急いで外へ出ると、警察官やパトカーが集まっています。夫はすでに救急車で搬送されていました。

夫に何が起きたのか……。

急いで、地元の小さな医院に駆けつけました。上着も持たずに出たので、寒さが身にしみ、待合室のソファーで肩をすぼめて縮こまり、夫の経過を聞けるのを待ちました。やがて現れた警察官は、

「ひき逃げで即死でした」。

そう一言だけ告げて、立ち去ったのです。

足の力が抜けました。震えが止まりません。心配した義父が、安定剤を手渡してくれました。遺体は、県警を経て、大学病院へと運ばれていきました。

あとで聞いて分かったことですが、夫はその日、従兄弟とゴルフに行ったあと、何軒か飲み歩いたのだそうです。自宅まであと50メートルもないところで、
「じゃあな、アニキ。明日も仕事だから、気ィつけてな」
と、従兄弟の肩をポンとたたいたのが、最後だったと聞きました。その直後、無灯火の車が、時速50キロで夫を直撃したのです。後頭部が裂け、内臓破裂を起こしていました。

毎晩、夫の夢を見て

夕方、ようやく、夫の遺体は自宅に戻りました。

「帰ってきたよ……」

親戚の声に、柩を見た瞬間、腰が抜けました。

現実なんだ、本当なんだ、夫は死んでしまった……。

仏間に運ばれた柩をのぞくと、夫の頭は白い包帯で幾重にも巻かれていましたが、顔は生きている人のようにきれいでした。

事故のショックで、義父は胃潰瘍になり、義母も入退院を繰り返しました。私は家事と仕事と看病で悲しみを紛らわしていました。

でも、一人になると悲しみがこみ上げて、仏壇の前で、

「どうして死んじゃったの」

と、泣き崩れる日々でした。毎晩、「ただいま」と帰ってくる夫の夢を見ました。でも、目覚めると、夫はそこにいない……。一層、悲しみが増すのでした。

心を許した女性まで……

そんな私を心配して、従姉妹が、
「親鸞聖人のお話を聞きに行きましょう。きっと心が晴れるから」
と誘ってくれたのですが、すぐにそんな気持ちにはなれませんでした。

苦しみはもう要らない。それより楽しいことに打ち込んで、今の地獄から逃れたいと思っていたのです。

同い年の社長夫人に誘われて、旅行や買い物へ行き、おいしいものを食べ歩きました。優しさをうれしく感じていたのですが、その夫人も、遠くへ引っ越してしまいました。

二重のショックで、子供を学校へ送り出したあと、家に閉じこもってひたすら泣きました。最愛の夫を亡くし、そのあと、心を許していた女性も自分から離れてしまい、もう何を信じていいか、分からなくなってしまったのです。

苦悩の人生を明るく楽しく渡す大船

いつもタオルを首からかけて目を真っ赤にはらしていた私を、従姉妹は、自宅で開かれる仏教講演会に連れて行ってくれました。夫の事故から丸4年が経って、ようやく、聞いてみようと思えるようになったのです。

その時お聞きしたのが、親鸞聖人の、

「難思の弘誓(ぐぜい)は、難度海(なんどかい)を度する大船」

のお言葉でした。

「難度海」とは、苦しみの人生を海に例えられて言われたもの。

空と水しか見えない海で、押し寄せる苦しみの波に翻弄されながら、私たちは、夫や妻、子供、金や財産、地位や名誉などの丸太ん棒や板切れ求めて、必死に泳いでいる。

しかし、すがった丸太ん棒がクルリと回って裏切られ、潮水のんで苦しんでいる。

そんな私たちに、親鸞聖人は、人生の目的を明示してくだされた。

「苦しみの波の絶えない人生の海を、明るく渡す大きな船がある。
その船に乗り、未来永遠の幸福に救われるための人生である」

と、お聞きしました。

海に浮いている丸太のような幸せにすがっては、裏切られて苦しむ。それを繰り返してきたのは、まさに、自分の姿でした。

「そんな苦悩の海を、明るく楽しく渡す大きな船がある」とのお言葉に、堰を切ったように涙があふれ出しました。今度はうれしくて、タオルで涙をぬぐわずにはおれなかったのです。

それ以来、従姉妹たちと、仏法を聞き求めるようになりました。本当にあてになるもの、難度海を渡してくださる大きな船を知らされた私は、大変な幸せ者です。

私は、大きく変わりました。人生の目的に向かって、まっすぐ前を向いて、歩めるようになったのです。今は、夫の死も、遠く離れていった夫人も、本当の幸せを私に知らせるためのご縁だったのかと思っています。

***

30歳の若さで夫を失った尾崎さんを、悲しみの底から救い出したのは、絶対に裏切られぬ幸福を示された親鸞聖人のみ教えだったのです。
今、まさに、悲しみに沈んでいるあなたも、一緒に聞いてみられませんか?

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