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この世から消えたい。55歳の夫と死別、一生分泣いた涙の底に光

「消えたい」と思うきっかけは人それぞれです。ただ共通するのは消えたいほど悲しくつらい思いをされているということでしょう。これは、この世から消えたいと思ったある女性が、再び笑顔を取り戻すまでの物語です。

「夫と死別し、この世から消えてしまいたいと思っていた私が、再び笑顔を取り戻すことができたのは、若い頃に慣れ親しんだ浄土真宗のおかげでした。生きる目的を知らされてみれば、どんな不幸にも必ず意味があります」。そう語る、福岡県の村上咲子さん(53・仮名)にお話を伺いました。

消えたい思いがやまないときに読んでほしい再生の物語

「でもね、生きてるのも、つらいよ……」

―1年前まで「この世から消えてしまいたい」と思っていらっしゃったと聞きました。

はい。苦難の日々は40歳を過ぎた頃から始まりました。4つ年上の夫が脳梗塞で倒れ、命に別条はなかったものの、体に麻痺が残り、一人では着替えもできず、箸も持てなくなってしまったのです。私は2人の息子を育てながら、夫の闘病とリハビリを支えました。

幸い夫は順調に快復しましたが、その後も2度、脳梗塞に襲われました。私は家計のために働き始め、夫の両親の看病も含めて6人分の食事を用意し、家事全般を一人でこなす毎日でした。

2年後、義母が亡くなると義父の認知症が一気に進み、私は仕事を辞めざるをえなくなりました。その頃、次男が肺を患い、大学病院で手術。夫は心筋梗塞を起こして再び入院しました。

認知症の義父の介護と、夫や息子の看病に奮闘しているさなか、弟の訃報がとび込んできました。大手電機メーカーに就職し、結婚も順調でしたが、うつ病になり休職、離婚したあとの43歳での自死でした。

その6日後には義父が亡くなり、立て続けに葬儀が続く中、息子に先立たれたショックで母が精神的に崩れてしまいました。「私が母を支えるしかない」。母との同居を相談すると、夫も賛成してくれました。

ところがそんな矢先、夫が緊急入院することになったのです。脳梗塞でも心筋梗塞でもない、膠原病間質性肺炎併発という病でした。「また入院だね」と夫婦で話していた、わずか1カ月後、夫は息を引き取りました。まだ55歳でした。

私は泣きながら遺影に語りかけていました。

「あんなに突然で悔しかったでしょう、つらかったでしょう。
でもね、生きてるのも、つらいよ……」

泣いても泣いても涙が止まりません。何十年分も泣いた気がしました。

「もう、人生疲れた。悲しいことが重なりすぎて、心が呼吸困難、多重事故を起こしている。この世から消えてしまいたい。誰か助けて……」

年が明けても、仏壇の前で泣き暮れる毎日でした。そして、
「私、何のために生まれてきたの? 何のために生きてる?」。
そんなことを毎日、考えるようになったのです。

「この世から消えたい心」がとけていった出遇い

―底知れない深い悲しみの中で、何が転機となったのでしょうか。

2月、ふとした縁で「浄土真宗」の講座の案内を目にしました。
熱心な浄土真宗の門徒だった義母の勧めで、私は30代の時から寺の行事に顔を出していたため、親鸞聖人のお名前に、言い知れぬ親しみを覚えました。お仏壇の右側のお写真は親鸞聖人、左側は蓮如上人と聞いたこともあります。でも、どんな方かは知りませんでした。

「家にいても泣くだけだから、行ってみよう」

と思い、私は市内の会場に足を運んでみました。それが親鸞会の仏教講座でした。
その講座で、
「こんな苦しい人生、なぜ生きるのか。なぜ生きねばならぬのか」
という講師の言葉が、ドスンと胸に入ってきたのです。

まさに、私が知りたい、聞きたいことでした。その時、親鸞聖人が、「苦しみの人生を明るく楽しく渡す大きな船があり、その大船に乗れば、どんなことがあっても変わらぬ絶対の幸福になれる」と教えられていることを知ったのです。

「えっ、そんな幸せがこの世にあるの?」

ものすごいインパクトでした。
それから続けて、その講座に参加せずにいられなくなり、暗く閉ざされていた私の心に一筋の光が差し込んだのです。
しかしやがて、複雑な思いが胸を覆うようになりました。

「私だけ幸せになってもいいのですか?」

―その複雑な思いとは、どんなことでしょうか。

「苦しみの海を渡す大きな船に乗れば、こんな自分でも幸福になれるんだ」と、親鸞聖人の教えは、私の人生に希望を灯してくれました。
でも、病と闘いながら必死に生きていた夫や弟は、もうこの世にいません。認知症だった義父にも、ひどいことを言ってしまいました。みんなを幸せにすることはできなかった。「私だけ幸せになってもいいのだろうか……」と思うようになったのです。

ある日、親しくなった講座の講師に、そのことを打ち明けました。その時、講師は静かに、『歎異抄(たんにしょう)』5章の親鸞聖人のお言葉を示してくれました。

「ただ自力をすてて急ぎ浄土のさとりを開きなば、六道四生のあいだ、いずれの業苦に沈めりとも、神通方便をもってまず有縁を度すべきなり」(歎異抄第5章)

(現代語訳)ただ、はやく本願を計ろう自力の心を捨てて、浄土で仏のさとりを開けば、どんな六道・四生の迷いの世界で、苦しみに沈んでいようとも、仏の方便力で縁の深い人々から救うことができよう。

「私自身が大船に乗り、絶対の幸福に生かされたら、大切な人が苦しみの世界に沈んでいても、助けることができる……。ああ、そうだったんだ!……親鸞聖人は、ちゃんと示されていた……」

すべての疑問が晴れ、私は心から笑顔になることができました。

今はハッキリと言うことができます。「人生の目的を知らされてみれば、どんな不幸にも必ず意味がある」と。「だから大丈夫」と。大切な人を亡くされ、消えたいほどの悲しみの淵にいらっしゃる方に、私の経験が少しでもお役に立てば、こんなにうれしいことはありません。

消えたい悲しみも苦しみも、笑顔に転じる世界がある

インタビューを終えて

苦しみの人生が、幸せな人生にガラリと転じる浄土真宗の教えと出遇い、「この世から消えたい」と思っていた人生が一変した村上さん。親鸞聖人の『歎異抄』の言葉によって、亡き大切な人たちも幸せになれる道が分かったと、悩みの晴れた笑顔で語られる姿がとても印象的でした。

追伸:村上さんの悩みを晴らした『歎異抄』は全18章からなります。中でも前10章は親鸞聖人の肉声をそのまま伝える珠玉の言葉にあふれ、私たちの魂をゆさぶり、魅了せずにはおきません。そんな『歎異抄』の分かりやすい現代語訳と解説をお知りになりたい方は、現在、『歎異抄解説』の決定版となっている、こちらの書籍がおすすめです。
『歎異抄をひらく』(1万年堂出版)

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